治療行為は、原則としてエビデンスに基づかなければならない。しかし、診断の過程及び治療の過程では、検査と臨床推論が必要であり、日々の診療には臨床推論が重要である。
患者の主訴(医療面接により聞き取る。)、検査結果等に基づき臨床推論により疾病の診断が行われ医行為(治療行為)が行われる。
その治療行為で疾病が完治すれば問題はないが、改善が見られないことも、しばしばである。その場合に、再度の検査、医療面接、臨床推論が行われ、診断が行われる。しかし、往々にして高齢で原因が不明だと「加齢が原因です。」とか「ストレスですね。」とか科学的根拠のない診断をしてしまいがちである。若い患者の命は重要だが高齢者は死んでも仕方ないとの風潮が医療界には存在するのが現実である。わが国の産業界においては「できない理由を並べるのではなく、出来る方法を考える」団塊の世代が頑張ってきたように思える。現代の若者は、まずいきなりできない理由を挙げることが先決で、出来る方法を考えようとしない。崩壊する国の兆候がそこには見えるようであるが、どうであろうか、診断のつかない疾病について、治らないと決めつけるのは楽である。
そこには、現代の大学教育の弊害が、詰め込み教育の弊害があえると考えるのである。医学部の入学試験も医師国家試験も記録力の優れたものが合格し、思考力は二の次である。そのために臨床推論の苦手な医師が多くなるのである。人間の頭脳は2種あると考える。それは、記録力に優れるか、思考力に優れるかである。この頭脳の作用は、相反する傾向にあり、記憶力に優れるものは思考力が苦手で、思考力のある者は、記憶力が苦手であることが多い場合を知らなければならない。医療人は、丁寧な医療面接、臨床推論により、正しい診断ができることも更に強く認識しなければならない。思考力の苦手な医療人は、思考力のあるスタッフと共同で臨床推論を進めれば問題は解決するであろう。
J-ISCM 日本臨床医学情報系連合学会加盟
Japanese Society of Comprehensive Medical Science
CMS 日本臨床総合医科学会 臨床推論部会
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東大附属前学術振興センター
臨床推論は診療の基幹:
現代医療は、医療機器の発達により検査結果はかなり精度の高いものが医療データとして確保できる時代になってきている。もちろん、検査は完璧でなく、取扱者の技能にもより、機械の精度によっても異なることも当然にありうることであるが、完璧を求めるのでなければ、かなりの精度が期待できる時代になってきた。しかし、機械の精度、取扱い技術者の技量もさることながら、医師の解析能力によっても全く結果が異なるのである。30数万の医師のなかでレントゲンの解析能力のある者はどのくらい居るのか不安を抱くのである。そして、検査結果の解析能力が優れていたとしても、その後の臨床推論に欠如があれば正しい診療はあり得ない。
昔の医師は、検査方法が不完全であったが、それなりの診療をこなしてこれたのはなぜであろうか。想像力が優れていたのだろうか。はったりで診療を行っていたのであろうか。いやいや、臨床推論能力に優れていたからだと考えることもできる。臨床推論は、科学に基づく想像力の集積である。それは、人の感性の力を発揮することでもあろう。
人が感性を忘れて検査結果にばかり注目し始めた時から臨床推論の不完全な診療が続くのである。人の頭脳は、外部から情報を得て色々な条件を即座に多変量解析を行い判断する。これが科学データに基づく感性診療である。臨床診療は、人の力を信じたところに存在すると考える。ただし、飽くまでも科学的根拠すなわちエビデンスが重要であることは論待たない。
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